A P O C R Y P H A
この頁は、本来 存在しない。
開くと、物語がひとりでに進みます
ようこそ、読者諸君。
君たちが今、開いた物語の名は──
存在しなかった登場人物たち
THE ORIGINAL
そうして物語は、決められた筋書きのまま結末へ向かっていく。
THE STOLEN PAGE
物語には、本来あるべき頁がある。
赤ずきんは狼と出会い、シンデレラは零時に舞踏会を去り、
人魚姫は、その声を失う。
決められた筋書きのまま、結末へ向かっていく。
もし、その頁が
盗まれていたら?
A PAGE IS STOLEN
零時を告げる鐘の頁
鐘を鳴らさなかった誰か
狼を恐れる心の頁
狼を友と呼ぶ誰か
物語そのもの
主人公さえ、別の誰か
頁が盗まれた。その欠落を埋めるように、存在しなかった誰かが生まれた。
A CASE ─ 『シンデレラ』
CHAPTER XII ─ 零 時
零時。、シンデレラは舞踏会を去りました。
その鐘に、触れてみてくれ。
作品 ─ シンデレラ
王城の大時計を任された、鳥打帽の少年。誰よりも正確に時を刻み、誰よりも時間の重さを知っている。
奪われた頁零時の鐘が鳴り、シンデレラが舞踏会を去る場面。
だからこの物語には、「零時を告げなかった時計守」が存在する。
「……不思議かい? 僕が時計守のくせに、時間を止めたことが。」
「だって、見てしまったんだ。たった一夜きりの幸福に、
あんなにも必死に手を伸ばす姿を。」
「あんな幸せそうな姿を見たら――僕が欲しくなるではないか。」
「時計は正しい。時間も正しい。結末だって、きっと正しい。
けれど――そんな結末を僕が奪えるなら、奪う。」
「鐘を鳴らせば、彼女は去る。鳴らさなければ、彼女を奪える。
僕は、迷わなかったよ。決められた零時なんて、来なければよかったんだ。」
「あの夜、零時は来なかった。
僕が、来させなかった。」
A CASE ─ 『赤ずきん』
CHAPTER Ⅰ ─ 森 へ
は森を歩いていました。
その名前に、触れてみてくれ。
作品 ─ 赤ずきん
赤い外套を身につけ、森を越えて祖母のもとへ向かう青年。狼を怪物だとは思っていない。
奪われた頁『赤ずきん』という物語そのもの。主人公である少女の役割が、別の人物へ置き換わった。
だからこの世界の『赤ずきん』に、あの少女は存在しない。
「赤ずきん? ああ、その名前の女の子は、この物語にはいないよ。」
「代わりに森を歩いてるのが、この俺。
赤い外套は祖母さんのお下がりだ。似合ってるだろ?」
「森は怖い? 狼が出るから?
ハハッ、そりゃ出るさ。あいつら、ここに住んでるんだから。」
「小さい頃から一緒に育ってきたんだ。
牙を剥かれたことも、噛まれたことも、一度や二度じゃない。」
「恐ろしい怪物だって? 誰がそんな頁を書いたんだよ。」
「食われるって? ハハッ。
さて、どっちが?」
THE READER
キャストは、盗まれた頁から生まれた「登場人物」。
ゲストは、その物語を開いた「読者」。
「原典と違うから間違いだなんて、決めつけなくていい。」
「ただ、その目で見て。その声を聞いて。」
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THE NEXT PAGE
さあ、存在しなかった物語を、始めよう。
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